屋根のプロが教える!破風板・鼻隠し・ケラバの役割と修理・補修方法
屋根で傷みやすい部分は天を向いている上面ではなく、むしろ側面です。屋根材は基本的に日光に晒されること、雨に打たれること、霜が降りること、雪が降り積もること、暴風に煽られることを想定して設計されています。
屋根の形状によっても違いますが、破風板や鼻隠し、ケラバと呼ばれる部分は雨にも打たれますし、風の影響に限っては寧ろ、屋根の面の部分よりも大きいと言えるでしょう。お家の中でも最も過酷な部分と言っても過言ではないのです。定期的なメンテナンスと補修はもちろんのこと、場合によっては新しいものへ交換する必要も出てきます。破風板・鼻隠し・ケラバの役割とメンテナンス方法を知り、ぜひ、お家の維持管理にお役立てください。
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屋根の側面の重要部分が「破風板(はふいた)」と「鼻隠し(はなかくし)」です
「建ててからの光熱費が節約できる、ほぼ掛からない」という理由から現在では片流れ屋根や招き屋根が人気ですが、やはり最も多いのは「切妻(きりつま)」と呼ばれる形状の屋根です。
2面だけで構成される非常にシンプルな形状の屋根で、特定の角度から見ると二等辺三角形のような形状をしていることから『三角屋根』と呼ばれることもあり、多くの方が思い浮かべることができるのではないでしょうか。ちょうど本を開いて伏せたような形状をしています。
この二等辺三角屋根の斜辺になっている端の付近をケラバと呼びます。このケラバの下で側面の部分を破風(はふ)と呼びます。使われている建材の素材や形状から破風板(はふいた)と呼ばれることもあります。
棟から勾配を下った屋根の端、地面と水平になっている部分を軒や軒先と呼びます。ほとんどの場合、軒先の先端には鼻隠しと呼ばれる板が取り付けられています。
破風と鼻隠し、どちらも屋根の端にあるので混同されやすいのですが、雨樋の有無という大きな違いがあります。
破風には雨樋が設けられていませんが、鼻隠しには取り付けられています。
吹いてきた風を切り裂き、屋根が飛ばされることを防いでいるのが破風です。「風を破る」と書いて「破風」です。とても格好良い名称と感じられるのは私だけではないはずです。
その名称の通り、風がお住まいに悪い影響を与えないようにするという重大な役割を担っています。
屋根を人体の顔に例えると、軒先の先端はちょうど鼻のあたりになります。この先端には棟から続いている垂木があり、見方によっては雑然としています。それを隠すから鼻隠しと呼ばれているのでしょう。建築だけでなく、身の周りには身体に例えられているものが多いですね。
破風がある部分の外壁から外側部分をケラバと言います。屋根全体に較べると非常に短い部分です。昆虫の「ケラ(オケラ)」の羽根が短いことから、ケラの羽根のような場所ということでケラバと呼ばれるようになったと言われています。余談ですが、ケラは穴を掘って土中で生活をし、泳ぐこともでき、空も飛べるという万能な昆虫です。
世の中には破風や鼻隠し、ケラバがない家も多数、存在します!
ここまで読んでみて、「私のお家には破風や鼻隠し、ケラバに該当する部分がない」と思った方もいるでしょう。世の中には元から破風や鼻隠し、ケラバがない屋根も存在します。
ビルに代表される陸屋根
ビルに代表される陸屋根
勾配がほぼない陸屋根にはその構造から破風や鼻隠し、ケラバがありません。
方形(宝形)屋根
方形(宝形)屋根
ピラミッド型の方形(宝形)屋根も寄棟屋根と同じく、全ての方向の軒先が水平となるため鼻隠しはあるものの、破風やケラバは存在しません。
寺院などに見られる六角形や八角形の屋根も同様です。
マンサード屋根
マンサード屋根
寄棟の屋根勾配が途中で急角度になるマンサード屋根も全ての方向の軒先が水平となるため鼻隠しはあるものの、破風やケラバは存在しません。
切妻屋根以外にも破風やケラバは存在するの?
「太陽光発電が数多く設置できるように片流れにしたけど、家の屋根って破風は存在するの?」と疑問に思った方もいるのではないでしょうか。
片流れ屋根にも破風やケラバは存在します。切妻屋根と同じように勾配が付けられた屋根の端、外壁から外側の部分がケラバで、その側面は破風です。
招き屋根や差し掛け屋根も同様です。複数の屋根が連なった形状の鋸屋根やM型屋根も同様になります。
破風も鼻隠しも外壁から張り出した屋根の先端に設けられていることは共通です。よって、その役割もおのずと似通ってきます。屋内への雨水の浸入を防ぐことと、風が屋根内部へ吹き込むことを防いでいます。
破風板・鼻隠し共通 屋根の耐風性の向上
屋根はその種類と形状を問わず、吹き下ろしてくる風への耐性はかなり強いのですが、下から吹き上げられるような風にはかなり弱いという性質を持っています。吹き下ろしてくる風に対しては柱や耐力壁で支えることができますが、吹き上げてくる風に対しては屋根の自重と釘や接着剤等の固定力だけで耐えなくてはならないのです。
破風板や鼻隠しの板が屋根の先端に取り付けてあるだけで、屋根を吹き上げるような風を分散させることができるのです。
破風板・鼻隠し共通 雨水の浸入防止
台風などの強風時には雨が真横から吹き付けるように降ります。破風板・鼻隠しは風を分散させますから、風によって流されてくる雨もそれによって分散し、屋根と外壁材が接合されている部分に到達しづらくなります。これによって吹き込むことを防いでくれているのです。
前述の屋根の耐風性の向上も、この雨水の浸入防止も、同じはたらきによるものなのです。
破風板・鼻隠し共通 美観の向上
屋根の下地である野地板とそれを支えている垂木、お住まいの中身である構造はほとんどが隠すように作られています。それらが見えると雑然としているように見えたり、建築中や修繕中のように思われたりしますのでよろしくありません。
神社・仏閣の垂木や母屋が立派に見えるのは見られることを意識して設計され、化粧されているからであり、そうではない一般的な建物は見えない方がすっきりと感じられます。
破風板のみ 防火性への考慮
現在では木材が使われることは少なくなりましたが、昔は耐風性や雨水への対策を考えて、破風板には強度があり、ある程度の厚みを持った木材が使われていました。
厚みのある木材の場合、表面は燃えますが、黒く焦げて炭化してしまえば、燃えていない部分に酸素が供給されにくくなります。建物内部へ火が回るまでの時間を稼ぐことができるのです。現在の破風板は不燃や準不燃の窯業系サイディングのものが使われることが多くなりました。
鼻隠しのみ 雨樋取り付け
雨樋を取り付けるところとして鼻隠しは最適です。雨樋の正確な固定方法は長い釘やビスを使い、鼻隠しを貫通させ、垂木にまで到達させます。
鼻隠しと垂木、2つの部材に取り付けられることから緩み難くなり、固定力も強力になります。鼻隠しと垂木で木材の繊維方向が違いますから、縦方向の力にも、横方向の力にも、引き抜きの力にも強くなるのです。
築年数がそれなりに経過しているお住まいの場合、破風板と鼻隠しには木材が使われることがほとんどですが、現在では耐火性と耐久性が重視され、燃えにくく、腐食しにくい窯業系サイディングものが多くを占めるようになりました。ガルバリウム鋼板などの金属製のものもあります。
外壁がモルタルのお家の場合、軒天から鼻隠し、破風までモルタル仕上げになっているものもあります。
役割・素材と共通点は多いが、破風板の方が傷みやすい
ケラバと軒先、似たようなところに設置され、担う役割も、材料もほぼ同じ… 何かと共通点の多い破風板と鼻隠しですが、環境的に厳しく、傷みが早くでやすいのは破風板です。
鼻隠しは雨樋によってある程度、直射日光も防げ、ダイレクトに雨がかかることも少なくなります。
それに対して破風板は直射日光があたる機会も多く、強い風にも堪えなくてはなりません。鼻隠しよりも傷みやすいのです。鼻隠しが傷んでいる場合、それ以上に破風板が傷んでいることが多いのです。
鼻隠しは雨樋で見にくい部分ではありますが、悪天候の後はもちろんのこと、定期的な点検も欠かさないようにしてください。
状態
塗膜が剥がれかかっている
補修方法
塗装 (ケレンして塗装)
費用
安い
これからの耐用年数
普通
状態
塗膜の剥がれは進行しているが、木材は健全
補修方法
板金撒き(破風板や鼻隠しを板金で撒いて覆ってしまう)
費用
中
これからの耐用年数
長い
※鼻隠しを板金撒きする場合、雨樋を取り外すので
新しい雨樋にした方がお得
状態
塗膜の剥がれが顕著、木材にも劣化や腐食あり
補修方法
部分交換、または全交換
(破風板や鼻隠しを部分的、または全面的に交換する)
費用
高い
これからの耐用年数
普通・長い
※鼻隠しを交換する場合、雨樋を取り外すので
新しい雨樋にした方がお得
※木材から窯業系に変える場合、部分交換はできないので全交換
部分的に交換する場合でも全体的に塗装となければならない
上からは雨、横と下から風とケラバも傷みやすい部分です。通常時は屋根の勾配に沿って雨水は流れていきますが、ケラバの方向に向かって強い風が吹けば、雨水が押し流されてこぼれるように屋根の端から破風へと流れていくこともあります。
地上から側面や破風、軒天部分は見えますが、上側は全く見えません。毎年とは言わないまでも、数年に1回は点検しておきたい部分です。ケラバは使われている屋根材によって、メンテナンス方法が異なってきますので、屋根材別に見ていきましょう。
互屋根(セメント瓦とモニエル瓦も含む)のケラバの部分には専用の瓦が使われています。ケラバ瓦や袖瓦と言われるもので、破風の一部を覆えるようにL字型をしています。ダメージを受けやすい部分だけに、ズレや歪み、割れたり、外れて落下することもあります。いずれも放っておけば、雨漏りに繋がりますのでできるだけ早く治してあげましょう。
ケラバ瓦のズレや外れ、落下
ケラバ瓦は釘などで固定されているのですが、緩むとズレたり、並びが歪んできます。酷い状態に外れてしまうこともあります。下地が健全な場合は取り外して、歪みなく並べ直します。
釘が緩んでくるのは風などの影響もありますが、下地に問題を抱えていることも多く、雨水が浸入し、腐食していることもあります。この場合は腐食している下地、野地板などを交換し、新しい防水紙に交換する部分的な屋根葺き直しを行います。
セメント瓦やモニエル瓦でも屋根葺き直しは可能ですが、瓦を取り外していくと一部が欠けていたり、割れていたりすることもあります。セメント瓦はほぼ生産が終了しており、モニエル瓦も製造されておらず、在庫は東日本大震災でほとんどが割れてしまいました。
セメント瓦やモニエル瓦の場合、瓦が手に入らないので屋根葺き替えになることもあります。セメント瓦やモニエル瓦は屋根塗装時にこちらのケラバの瓦もしっかりと塗装します。
スレート屋根と金属屋根ではケラバの端にガルバリウム鋼板などの板金を加工したケラバが使用されていることがほとんどです。こちらの板金は一見、L字型のようにも見えますが、実はちょっと複雑な形状をしています。
ケラバ板金の釘の浮き、変形、錆
釘が浮いていたり、外れかかったりしている場合はビスを増し打ちして強固に固定します。変形している場合、その変形量が少ない場合はやはりビスを増し打ちして強固に固定します。
変形が酷い場合や錆が酷い場合は交換となるのですが、板金はL字型ではなく、屋根材の下に入り込んでおり、なおかつ固定されているため、屋根材を広く剥がさないと交換できません。スレートも金属屋根材も剥がした部分は再利用できませんから、将来のことを考えれば屋根カバー工法や屋根葺き替えを選択した方が賢い選択になることもあります。
スレート屋根も、金属屋根も、屋根塗装時にはケラバ板金をケレンしてから錆止めを塗布し、しっかりと塗装します。
一度の足場仮設でまとめて補修工事をしたほうがお得です
お住まいが2階建の場合、1階部分よりも風雨が激しい2階部分の方が傷みは出やすいという特徴があります。また、2階部分の工事には足場が必要なので、まとめて他の工事もやってしまった方がお得です。
板金巻きや交換をする場合は雨樋も新しくしてしまった方がお得です。雨樋をはずして、取り付ければ、これまでのものでも、新しいものでも、脱着は1回です。
破風板や鼻隠しの補修だけという工事をすると、雨樋交換が必要になった時に足場の仮設、雨樋の脱着を再度、行わなければなりません。
新しいものにしておいた方が確実にお得と言えるでしょう。工事中だと生活も落ち着かないし、費用の面でも大きな負担になってしまいます。
ケラバと破風板、鼻隠しは傷みが出やすい部分でありながらも、あまり気にされることはないところではないでしょうか。建物全体に締める面積が少ないために目立ちませんし、ケラバは裏側の軒天は見えるものの、上側は全く見えません。見上げないと見えない部分だけに気付いたらボロボロになっていたということも多いのです。
見えづらい部分のため劣化に気づきにくい
街の屋根やさんでは建物の無料点検を実施しております。破風板・鼻隠し・ケラバはもちろんのこと、屋根全体、建物全体を隈なく点検致します。また、リクエストがあれば他の部分もしっかりと点検致します。
「この前の台風は大きかったけど、建物は大丈夫かしら?」、「何年も点検もメンテナンスもしていないから雨の季節が心配…」という不安をお持ちの方はぜひ、ご利用ください。問題点がなかった場合はそれで安心できますし、見つかってしまった場合は最適なアドバイスを致します。
破風板・鼻隠し・ケラバの役割と修理・補修方法のまとめ
●屋根の側面の重要部分である「破風板」と「鼻隠し」は傷みやすいので定期的なメンテナンスが必要です
●世の中には「破風」や「鼻隠し」、「ケラバ」がない家も多数、存在します
●片流れ屋根や差し掛け屋根にも「破風板」と「鼻隠し」と「ケラバ」が存在します
●「破風板」と「鼻隠し」と「ケラバ」、部位は違うが耐風性の向上、雨水の浸入防止、耐火性の向上という役割があります
●「破風板」と「鼻隠し」の材料は同じなので補修方法もほぼ同じです
●傷みが軽微なうちに塗装で保護するのが理想です
●傷みが酷くなってきたら、板金で巻いて覆ってしまう補修方法もあります
●「破風板」と「鼻隠し」に劣化や腐食がある場合は部分交換や全交換を行います
●「ケラバ」も傷みやすい部分です
●「ケラバ」は屋根材によってメンテナンス方法が異なります
●「破風板」と「鼻隠し」と「ケラバ」の点検は街の屋根やさんの無料点検をご利用ください
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