とても重要!雨漏りを防止する雨仕舞い
「防水」は一般の方でも馴染みのある言葉だと思いますが、「雨仕舞い」は聞いたことがないという方がほとんどではないでしょうか。屋根やさんなどの建設関係者でなければ、聞く機会がない「雨仕舞い」、雨漏りを防ぐためにとても重要な考え方なのです。
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雨水を残留させないのが雨仕舞いの基本的な考え方
雨を仕舞うと書いて「雨仕舞い」、建築関連の用語としては一般的なものですが、理解しにくいと思います。
では、「雨水を仕舞う」としたら、どうでしょうか。
降雨による建物への雨水をしかるべき場所に適切に納めたり、受け流すのが雨仕舞いの考え方(概念)です。建物のさまざまな部分に雨水が残留していれば、やがて建物内部に浸水してくる可能性もあります。そうならないように雨水を適切に排水してしまうのが雨仕舞いなのです。
屋根や外壁、窓枠などから雨水が建物内部に浸入しないようにします。
雨仕舞いと防水の基本的な違い
似て非なるのが雨仕舞いと防水です。雨仕舞いも雨水が関係していますから、防水機能のお世話になることは多いのですが、その負担を減らすような工夫がされています。
防水というと、建物表面や防水シートなどで雨水の浸入を防ぐという設計です。それに対して雨仕舞いは雨水そのものを適切に排水し、建物内部に極力、浸水させないという設計です。両方とも目指すところは同じですが、雨仕舞いは積極的に排水させることによって建物内部に雨水を浸入させないというところに主眼をおいています。
実際の建物で雨仕舞いが特に重要な部分、違う部材が出会う「取り合い」
さまざまな建物において雨漏りが一番、起こりやすいのが「取り合い」と呼ばれる違う部材同士が結合される部分です。
具体的な例を挙げますと、2階建ての建物で1階の屋根と外壁の結合部分などです。外壁はほぼ垂直、それに対し、屋根などは勾配があるものの水平に近い角度で取り付けられています。外壁を伝ってきた雨水などの流れを妨げるように接合されているのです。
こういった垂直の部分に対し、雨水の流れを妨げるような構造があると、どうしてもそこで雨水の滞留が起こるようになります。雨水の滞留が起こる場所は雨水も建物内部へと浸入しやすくなるので、それをガードしたり、できるだけスムーズに雨水が流れるよう工夫する必要があるのです。
また、ベランダやバルコニーの床(水平)と壁(垂直)が出会うL字の部分、立ち上がりと呼ばれる部分も雨水の浸入を許しやすいので、こちらもしっかりと雨仕舞いをする必要があります。
雨仕舞いで重要なのが「水切り金具」と「防水紙」と「シーリング」
実際の雨仕舞いでは外側に「水切り金具」と呼ばれる建材を設置し、その下に防水紙を敷設します。そして、水切り金具と防水紙の隙間から雨水が浸入してこないようにシーリング材を充填します。
水切り金具は錆に強いガルバリウム鋼板などの金属が使われています。この水切り金具、雨水を染み込ませないのはもちろんのこと、使われる場所によっては雨水を外壁などに伝わせないような形状をしています。外壁などに雨水を伝わせないことによって、汚れを付着しにくくしているのです。
スレート屋根や金属屋根に取り付けられている棟板金も水切り金具の一つです。
また、屋根を伝ってきた雨水が屋根内部に入り込みやすいケラバ部分や軒先(鼻隠し)、屋根と外壁の取り合い部分へも水切り金具が取り付けられます。
屋根周辺の雨仕舞いが不充分で起こった雨漏り・被害
強風時に一番多い被害「棟板金の剥がれ」
経年により釘が浮いてきたり、棟板金が浮いてきて、雨仕舞いが不具合が生じ、貫板を腐食させてしまったケース。貫板の腐食により棟板金の固定力が弱まっているので、強風により剥がれたり、飛散したりということが発生する。
台風などの強風時に特に多い被害で、棟板金と貫板の交換が必要となる。釘が浮いてきたら打ち直して、その釘穴にシーリングを施すなどの対策はできるが、屋根の上にあるだけにそこまで目が届かないことがほとんど。雨仕舞いが完璧であっても、定期的に交換が必要になる部分ということを覚えておこう。
谷樋の経年劣化による雨漏り
屋根の谷になっている部分の雨樋が経年で劣化し、穴が開いたり、その周辺の裂けたりしている防水紙から屋根の内部に雨水が浸入してしまったケース。谷樋とその周辺が健全であっても、ゲリラ豪雨によって雨水がオーバーフローし、雨漏りが発生するケースもある。
補修するのがちょっと厄介な部分で、谷樋の両脇の瓦を全て外し、防水紙を張り替えたり、谷樋を交換したりしなくてはならない。雨水が浸入しやすい場所なだけに、業者の腕が試される箇所でもある。
屋根と外壁の取り合いの不具合による雨漏り
下屋(1階部分の屋根)と外壁が結合する部分、そこのシーリングが切れていたり、防水紙に問題がある場合、発生する。防水紙の立ち上がりが短い、水切り金具が適切に取り付けられていないなど、新築時の施工不良も稀に見かけることがある。
違う素材が出会ったり、垂直と水平が結合する部分はシーリングが剥がれやすかったり、どうしても隙間ができやすかったりする部分でもある。簡単に目視できる部分であるなら、常日頃から点検をかかさないようにしよう。
サッシ周辺やベランダ・バルコニーに行われる雨仕舞いです。ご存知の通り、サッシの周辺にはシーリングが充填されておりますし、ベランダやバルコニーの出入り口となっている部分には目立ちませんが水切り金具が取り付けられています。
サッシの周辺に充填されているシーリング材の劣化による雨漏り
サッシの廻りに充填されているシーリング材が経年で傷んできたり、サッシを固定している釘やビスなどの緩んだり、変形してしまうことで雨水が浸入してくる。室内側の木材やクロスにも被害が出やすく、気付きやすい。
寒暖に合わせて外壁も、サッシも収縮すれば、そこに充填されているシーリング材も収縮する。さらに地震の際には緩衝材としても活躍する。隙間を埋めているだけの単なる柔らかい素材と思いがちだが、実は色々な役割を持っている部分なのだ。
ベランダ・バルコニーの水切り金具の変形や破損による雨漏り
ベランダやバルコニーの出入り口となっている部分に取り付けられている水切り金具は床から数センチのところにあるため、足で踏んだりして、変形・破損させやすい。変形・破損が酷い場合はここから雨水が浸入していく。
水切り金具の変形・破損によって、内部の防水紙に傷をつけてしまう可能性もあるので、それなりに強度はあるが要注意。ぞんざいに扱われることも多い部分だが、実は踏んだり、蹴ったりすることはNGなのである。
基礎と外壁の間にある水切り金具の変形や破損による雨漏り
お家を点検していると意外と変形していることが多いのがこの部分の水切り金具。植木鉢などを移動させている時にぶつけたり、自転車があたったりすることが多いのだ。室内ではなく、床下などに雨水が浸入していくので気付きにくい。
こちらもぶつけ方によっては内部の防水紙に傷をつけてしまう可能性もある。また、床下などの湿気はシロアリを呼び寄せる可能性も高いので、気付いたら大変なことになっていたというケースもありえるのだ。
屋根の専門業者なら雨仕舞いが大事だということは絶対に知っているはずです。しかし、世の中には屋根のことを知らずに屋根工事を行う業者も存在します。
そういった業者が行いがちなのが、間違った施工です。降ってきた雨をしっかりと排水するという考えがないのです。
瓦屋根の間違ったラバーロック工法による雨漏り
強風が吹く地域などで屋根瓦などが落下しないようにシーリング材で固定してしまうラバーロック工法。
瓦の山の左側とその下側にシーリング材をL字型に塗布するのが正しい施工方法です。
瓦の四方をシーリング材で隙間なく固定してしまうと、瓦の下に入り込んだ水分や湿気の排出口がなくなります。水分や湿気が排出されるのは室内となり、深刻な雨漏りを発生させます。
雨仕舞いを知っている業者なら絶対にやらない施工です。
スレート屋根の雨漏りに対するシーリングによる安易な雨漏り補修
こちらも屋根材と屋根材の隙間を全てシーリングで埋めてしまったというケース。スレート屋根から雨漏りしていたらしいので、とりあえず隙間を全部埋めてしまったようです。一時的に雨漏りは止まったが、すぐに再発したそうです。雨水を適切に導くという考えがない業者が行ったのでしょう。
3日1回雨が降る日本だからこそ
建物に降ってきた雨がどのように流れていくかを熟知している業者を選びましょう
雨漏りを防ぐには防水という考え方ももちろん大事ですが、それ以上に降ってきた雨が屋根と建物の表面でどのように流れていくかを知っていなくてはなりません。それを知らなくては雨水を適切に誘導し、排水させることは不可能なのです。
前述のように雨仕舞いを全く知らないであろうリフォーム業者が屋根工事を行っているケースも存在します。そんな業者に貴方は大切なお家の工事を任せられますか。
施工はもちろんのこと、点検も雨仕舞いを熟知している業者に頼むのが間違いないのです。
雨仕舞いのまとめ
●雨水が建物内部に浸入しないよう、適切に誘導し、排水するのが雨仕舞い
●防水は雨水の染み込みや浸入を防ぐこと、雨仕舞いは雨水を滞留させずに流すこと
●建物で特に雨仕舞いを必要としているところが下屋と外壁が結合する取り合いの部分
●屋根の雨仕舞いは棟板金の他、ケラバや軒先、谷板金の部分が重要
●外壁の雨仕舞いはサッシ、ベランダ・バルコニー、基礎と外壁の間が重要
●雨仕舞いを知らない業者は間違った屋根工事してしまうことも
●建物に降ってきた雨がどのように流れるかを熟知している業者を選びましょう
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